AIにはプロの力が必要だ

生成AIが異次元の速度で進化を続けています。
人や企業が使いこなすスピードが追いつけていないのかもしれない。

「いずれエージェントがすべてやってくれるんでしょ」
「バーチカルに開発してもホリゾンタルに飲み込まれてしまうから」
そんな諦めにも似たセリフが聞かれる機会も増えてきました。

いえいえ、手綱を緩めるのはまだ早い。
LLMは世界の誰かができることには驚くべき能力を発揮しますが、
世界で誰もやっていないことは、まだできない


そう、クリエイティブや経営など、
ゼロイチを手掛ける部分はこれからも人間の仕事です。
AIにプロの力を与えることで、プロのためのAIができあがるのです。

3つのプロ

人間のプロフェッショナル、AIのプロンプト、
そしてコンピュータのプログラム。
この先3つのパワーバランスに変化があるとしても、
どれかが欠けることは決してありません。
生成AIだけですべてを完結させようとするのではなく、
この3つのプロの力を活かしきることが
AIで生産性と創造性をアップする現実解です。

そのAIの使い方は世界をつまらなくする

クルマの運転に例えてみましょう。すべてをAIに任せて人間は別のことをやるのか、自分でドライブすることを重視するのか。ドライビングプレジャーが現実に存在する限り、それを奪ってしまって、車内で映画を見たりゲームをすることに置き換えることは筋のいい話とはいえません。AIがめんどくさい仕事や作業をこなしてくれることは大歓迎ですが、本来人間が楽しいと思っていることは人間が手掛ける領域です。

多数のAIを協調駆動させる快感

人間は、チームで物事をなしえたときに大きな達成感が得られます。これをAIに置き換えてみてはどうでしょうか。人間のような苦労を分かち合う戦友にはならないかもしれませんが、単独のAIチャットとやり取りするのとは、また別の快感原則が存在します。このプリミティブな疑問から、『カードコマンド』の開発は始まりました。

タスク分解してから、もう一度束ねて「型」にする

一見意味がないようなこのやり方。ポイントはタスクを割り当てられたクライアントAIどうしに「スキマ」ができることです。そこに人間が介入することで、AIのオーケストレーションをコントロールできるようになります。一定の決まり事はあるけど、決めすぎない「型」は何か。自動化するけれども人間が腹落ちする参加性はどの程度だと良いのか。その自由度の設計が最大のポイントでした。

3000本のプロンプトを書いて見えたこと

結論として、プロンプトは短くて鋭いほど、AIは質の良い答えを返してきます。その点においては広告のキャッチコピーと似ているかもしれません。ただし、ゼロショットだと明後日の方向に行き、フューショットやメニーショットだと予定調和になる。このあたりの「斬新感」と「安心感」のバランスが、with AIのクリエイティブの難しいところです。

「思い付く」と「決める」を分けてみる

クリエイティブ思考は、思い付くことと決めることが同時多発する、きわめて高度な脳作業です。このうち思い付くことをAIに任せて、人間は決めることに集中したらどうなるでしょうか。右脳と左脳の関係になるのでしょうか。広告代理店のコピーライターとクリエイティブディレクターのような関係になるのでしょうか。人間とAIのコラボで織り上げる最高のテキスタイルを追求する、そのために『カードコマンド』の開発が必要でした。

使えないAIは切り捨てるという残酷な方法

多数のクライアントAIに発想させて、いいとこ取りをする。回答が期待に添わないAIは退場させる。『カードコマンド』のワイルドなこのやり方は、しかし確実に未来を示しました。AIの回答から選ぶのではなく、AIをまるごと取捨選択するというのは強い「決め感」があります。これは人間どうしの関係性においては絶対にやってはならないことですが、AIだと(心情的には少し躊躇いますが)できる。この新感覚は、ぜひ『カードコマンド』でお確かめください。

【参考文献】

「人がAIをサポートする」視点の研究と実践事例

ヒューマン・イン・ザ・ループによるモデル性能向上

アクティブ・ラーニング(Active Learning)はHITLの代表的な手法で、モデルが自信の低いデータや追加情報が有用と判断したデータを人間に問い合わせ、人がラベル付けして再学習することで効率的に性能向上を図ります。例えば、創薬分野の研究では、人間専門家を“オラクル”として活用する適応型のアクティブ・ラーニング枠組みが提案されています​
chemrxiv.org
Nahalら(2024)は、生成モデルが提案した新規分子について人間が評価・フィードバックすることで予測モデルを洗練し、結果として生成される化合物の精度やドラッグライクネス(医薬品らしさ)が向上したと報告しています​chemrxiv.org
このように、人間の専門知識による反復的な評価とデータ追加がモデルの汎化性能を高めることに成功しています。

オーケストレーションとエージェント技術の発展

複雑なタスクや動的な環境では、複数のAIエージェントや人間とAIのチームが協働して問題解決に当たるケースが増えています。このような場面で重要となるのが、オーケストレーション(調整)の考え方です。オーケストレーションとは、まるで指揮者のように各エージェント(AIや人間)の役割分担と連携を統括し、全体として調和の取れた行動を引き出すことを指します​
aibusiness.com
一つのAIが単独で高度な判断を自律的に下すのではなく、上位の「オーケストレータ」エージェントが他のAIエージェントの動作を監督・調整するアーキテクチャも提案されています。​aibusiness.com
これにより、各専門AIがサイロ化して部分最適になることを防ぎ、全体最適を図ることが可能となります。​aibusiness.com
企業向けシステムでも、複数のAIツールやサービスを束ねて業務フロー全体に組み込むエージェント指向のプロセスオーケストレーションが重要視されています​aibusiness.com

一方、人間がオーケストレーション役割を果たす場合もあります。研究コミュニティでは、人間とAIが対話的にタスクを解決する混合イニシアチブ(Mixed-Initiative)システムや、人間が必要に応じてAIの意思決定をインタラプト(割り込み)して修正できるフレームワークが模索されています。camunda.comcamunda.com
例えば、機械学習モデルの推論過程で不確実性が高いと判断された場合にAIが自律的に人間に確認を求める、といったエージェントの設計も考えられます。このような人間とAIの協調エージェントでは、AIがルーティン作業を高速に処理し、人間が創造性や倫理的判断を要する局面を担うことで、それぞれの強みを活かした問題解決が可能となります​camunda.com / camunda.com

創造分野における人間とAIの協調

クリエイティブ領域(アート、デザイン、音楽、文章生成など)は、人がAIをサポートする意義が特に大きい分野です。AIは膨大なデータからパターンを学習し新奇なアイデアの断片を生み出すことに秀でていますが、文化的文脈や美的価値の判断といった側面では依然として人間の役割が重要です​
arxiv.org
Chung(2021)は、創造的応用におけるHITLの現在と未来を概念化し、人間がキュレーター(選択者)や共同制作者としてAIモデルに専門知識をインタラクティブに組み込むアプローチを提唱しています​arxiv.org
具体的には、生成されたアート作品の中から人間が優れたものを選別・評価してフィードバックしたり、人間の審美眼や感情的反応をモデルに取り入れたりすることで、AIに単独では獲得しにくいニュアンスや多様な創造性を学習させることが可能になります​arxiv.org
例えば、画像生成AIが出力した多数の候補から人間のアーティストが作品としてふさわしいものを選び出し、その選択をモデルに反映することで、モデルは暗黙知である「良い作品」の基準を徐々に獲得できます。また、テキストや音楽の生成においても、人間が部分的に編集・補完したりアイデアの方向性を指示したりすることで、より表現力豊かな成果物が得られるという報告があります​arxiv.org
このように、人間とAIのインタラクションを創造プロセスに組み込むことで、AIシステムが人間の創造性や感性をより深く理解し反映できるようになると期待されています​arxiv.org

以上、GPT Deep Researchによるまとめを含む